用語集 


量子化学計算に関係する用語を調べた覚え書きとして作成したものです。

あ  か  さ  た  な  は  ま  や  ら  英 



解離エネルギー   化学結合によって安定した状態で存在している分子からその構成要素である原子を引き離すのに必要なエネルギー。原子が結合して安定化する時放出するエネルギーに着目する場合は結合エネルギーという。
 
殻構造   原子の中で電子が入るには順番が有り、まず最もエネルギーの低い量子数の状態に入り(主量子数n=1)、順次高エネルギーの量子数の状態に詰まっていく。このことを殻構造という。主量子数n=1,2,3・・・に対してK殻、L殻、M殻・・・と呼ぶ。
 また、一つの殻の中で軌道角運動量の異なるものを副殻という。軌道角運動量に関係するのが
方位量子数 (ℓ)で ℓ=0、1、2・・・に対してs軌道、p軌道、d軌道・・・という。  
重なり積分   
基底関数   分子軌道関数(MO)を構成原子の原子軌道関数(AO)の一次結合で表す方法をLCAO法というが、この基本となるAOを基底関数という。
 
基底関数重ね合わせ誤差
(BSSE)
 
「基底関数重ね合わせ誤差は,A‐B相互作用系の量子化学計算において不十分な基底関数を適用したときに,A,Bが互いに相手の基底関数を使って過度に安定化してしまうことにより生じる誤差です。・・・結合エネルギーの見積もりには基底関数車ね合わせ誤差は必須となります。」(「すぐできる量子科学計算」より) 
 共有結合など大きい結合エネルギーを持つ場合はそれほど問題にならないが、水素結合やvan der Waals 結合のような弱い相互作用の場合に重要になる。
ギブズの自由エネルギー   化学反応によるエンタルピーの変化から熱や体積変化の仕事を差し引いた残りのすべてのエネルギーのことで、反応によって系から取り出せる正味のエネルギー。G=H-TSで定義される。
 温度一定、圧力一定の条件下でギブズ自由エネルギーの変化量△Gにより反応の可能性を判定できる。
  △G<0:実現可能   △G=0:平衡状態   △G>0:実現不可
  
   
クープマンスの定理  第一イオン化エネルギー参照 
   
   
結合エネルギー  原子同士が化学結合して分子となり安定化する時に放出されるエネルギー。分子を原子状に戻す時に外部から与えるエネルギーに着目した場合は解離エネルギーという。
 
結合次数   分子を構成する原子間の結合の強さの目安となる。結合次数を計算する簡便な方法としては、(結合性軌道にある電子数-反結合性軌道にある電子数)÷2で計算する。
 π結合だけを扱うヒュッケル分子軌道法(HMO法)では、計算の結果得る分子軌道係数を使ってn結合の寄与を計算できる。原子aと原子bの結合次数をP(ab)とすると
     P(ab)=ΣnCaCb
  ここで Ca  Cb は結合性軌道のa, bのそれぞれの係数、nはその軌道を占める電子数で、すべての結合性軌道について和を取る。
 MOPACの場合、キーワード「BOND」を指定すると結合次数が出力される。
 Fireflyは特に何も指定しなくても出力に含まれる。
 電子反発項を無視するHMO法に比べ精度の高い計算手法を用いるほど結合次数は下がる傾向にある。 

結合性軌道   分子軌道は構成原子の原子軌道の重なりにより定義されるが、分子軌道のうち原子同士の結合に寄与する軌道のこと。
 位相の揃った原子軌道が重なると原子核と原子核の間に電子が存在できるようになりそのクーロン力により原子核同士を結合させることができる。
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
固有値・固有関数   ある関数 Ψx に演算 Ā を施した結果が、元の関数の定数倍になる時 (ĀΨx=aΨx) aを固有値 Ψxを固有関数という。
 シュレーディンガーの波動方程式もそうで (HΨx=EΨx) E(全エネルギー)が固有値Ψxが固有関数になる。